【閲覧注意】猪 鹿を狩る そして食す。
猪名川町の山にいる猪・鹿を狩り食べるまでのドキュメンタリー
※一部血や生肉、内臓が写っている写真を掲載しています。閲覧はご注意ください。
お腹が空いた時、お金さえ支払えば簡単に食べ物を食すことができる現代。でもそこに、生きていた動植物の命をいただいている感謝の念を持っている人はどれくらいいるのでしょうか。ハンバーガーや焼肉は牛の命、手羽先や唐揚げは鶏の命、お寿司や焼き魚は魚の命。スーパーでトレーに乗っているお肉も魚も元々は命があったもの。私たちは命をいただきお腹が満たされ、そして命を伸ばしています。そんな当たり前の事も気薄になってきているような気がするのです。
今回の記事は賛否両論あると思います。しかしこれが、「おいしいジビエ料理特集!」ではどうでしょう。
いながわベースでは少し角度を変えて、山にいる猪・鹿が食べ物に変わる時、そこにいる私たちはどの様に感じるのか。「猪や鹿が農作物を荒らすからもっと殺さなくては」という思考は短絡的すぎとも思います。『狩猟』という難しいテーマをドキュメンタリーで取材してみました。
ある寒い日の朝7時。我々いながわベース取材班は猟師達が集まる山小屋に向かった。山の麓にあるその小屋ではちょうど当番の方が火を起こしている。電気などはもちろんない。おそらく数百年前の猪名川町でも同じ様な光景があったのではないかと容易に想像できる原風景。
チームとしては十数人いるらしいが、朝ここに集まるまでに、それぞれが山の様子を見てくるのだそうだ。足跡や糞跡などの情報を集め、その日どこのポイントがいいかリーダーが決断する。
9時頃、メンバー達が集まりだし話し合いをする。我々取材班が行くことを事前に伝えていたので、以前狩った時のお肉を持ってきてくれて振舞ってくれた。
この時はいながわベースメンバーも「美味しい!」と笑顔。猪肉の【癖がある】【臭う】などの潜在的に持っていたイメージはなく、ホントに美味しかった。しかし、このままではただのグルメレポートである。
そんな中、無線で猟友会メンバーの一人から一本の連絡が入った。
「檻の罠に子鹿がかかっている。」
それまでの和やかな雰囲気は一瞬にして緊張感に変わった。ハンター達は準備にかかる。その現場に我々も同行させてもらった。
荒れた山道を走り、車から降りて徒歩10分の山の中。山で水たまりの横を通った時、ハンターはここで数時間前に猪がいたことを確信した。足跡、水の濁り、木についた泥の跡から。
檻の中に小さな鹿がいた。あっという間の出来事だった。槍で心臓を一刺。最後の鳴き声を出した後、動かなくなった。ものの数秒間だった。現場にいたいながわベースメンバーは皆、「最後の鳴き声」がこの後も耳から離れなかった。
そこから小鹿の体に番号が書かれ、黒板と一緒に写真撮影。鳥獣被害対策として町に提出するとのこと。作業は事務的に進んでいった。軽トラの後ろに小鹿を乗せて山小屋に戻る。先ずは山の神様に感謝を込めて祈ることを欠かさないという。
さっきまで生きていた子鹿を解体していく。すでにいながわベースメンバーに笑顔はない。ただ目を背けることなく全てを見ようとしていた。まだ温かい。内臓の一部はまだ動いている。動物が食べ物に変わっていくリアルな光景。
※ここからは特に閲覧注意です。血や生肉、内臓が写っている写真を掲載しています。
現代、我々はお金を支払い、この作業をやってもらっている。目の前に出てくる時、すでに美味しく調理された料理や、後は焼くだけの状態のお肉が出てくる。生き物を直接殺すことはないけど肉を食べる。
新鮮な鹿肉は美味しかった。しかし、さっき食べた時とはみんなの表情は違った。
食事を始める際の日本語の挨拶「いただきます」の背景にあるのは感謝と言われている。食事の提供者や農業・労働・調理にかかわった人への感謝。食事になることで犠牲になった食材の命に対する感謝。食べ物を生み出す天地の恵み、それらを含めた関わったもの一切によって、我々が生かされていることへの感謝。普段、何気無く食べている肉。それは生きていたもの。人間はそれを食べて生きている。恐ろしいと言えばそれまでだが、これほど「生命」について深く考えさせられたことはない。この取材を通じて改めて生き物への尊敬の念と感謝の気持ちを深めることができた。
追伸
この取材の後、いながわベース取材班は14時くらいから別の取材先に行ったのだが、その後ハンター達は山に向かった。
その様子を写真でいただき、この日の「山の幸」は大猟であった報告を受けた。
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